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タカラヅカのビジネスシステム~その2~

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ロングラン興行とファンコミュニティ活性化

前回(主催興行の重要性)に引き続き、今回も宝塚歌劇のビジネスシステムの特徴についてご説明します。
今回のテーマは「ロングラン興行」についてのお話しです。

なぜロングランするのか

演劇興行において、利益を極大化させる最も有効な方法は言うまでも無く、一本の作品を「可能な限り長期にわたって」上演する「ロングラン興行」となります。
ブロードウェイしかり、またみなさん良くご存知の劇団四季(「ライオンキング」「美女と野獣」など)もしかり、エンターテイメント業界ではごくごくあたりまえの光景です。

ではなぜロングラン興行で利益が極大化できるのか?
それは演劇興行での製作費に占める「固定費」の比重の大きさにあります。

プロの興行の場合、公演回数が1回であろうが100回であろうが、均一料金をいただく以上、衣装や道具、照明や音響もすべてプラン通りに「完全に」製作しなければなりません。チケットが売れないので公演はたった1回しかできない、だから出演者の衣装は自前にする・・・ということは決してできないのです。

初期投資が多額になる興行というものは、利益を出すために、「損益分岐点」を超える売り上げが想定される回数をこなさなければなりません。しかし、いったん損益分岐点を超えると「変動費」は出演者のギャラやスタッフの人件費、ホールの使用料や手数料などに限られるので、回数を重ねるごとに利益が積みあがります。
そして、利益を極大化させるためには、チケットの売り上げが変動費を賄いきれなくなるまでロングラン興行を続けるべきということになります。

ロングラン興行ができない宝塚歌劇のシステム

ところが、宝塚歌劇の公演形態はロングラン公演を実施することが不可能なのです。花・月・雪・星・宙の「5組が平等」になるように1年間の公演スケジュールが設定されます。例えば、「宝塚大劇場」「東京宝塚劇場」で行われる公演は、それぞれ50回程度の公演になります。

つまり、「ベルサイユのばら」のような超人気公演であろうが、トップスターの「サヨナラ公演」(退団公演)であろうが、たとえ100回公演を企画してもチケットの完売が予測できる公演、一方で、トップスターの人気がイマイチで、稼働率低下が予想され、本来なら30回程度で終わらせたい場合であっても、この「5組が平等」の原則は貫かれます。

これは、先にご説明しました興行ビジネスの大原則に反しますし、阪急グループ事業の「(鉄道・不動産に続く)第3の柱」として位置づけられている状況にも著しく悪影響を与える原則となります。

ではいかに??・・・タカラヅカの対策

興行の大原則に反する不利なこの状況を興行主催者である阪急はいかに克服しているのか・・・についてご説明します。
取り得る方策は以下の2点となります。

  1. 同一年度内で同じ作品を異なる組で再演する
  2. 「宝塚大劇場」→「東京宝塚劇場」と巡演する演目をそのまま「全国ツアー」などの外部売却公演にあてる。

まず「1」について詳しくご説明しましょう

宝塚歌劇の作品は基本的に歌劇団の「座付演出家」が書く「オリジナル作品」です。つまり、宝塚の特徴である「トップスターを頂点とするスターシステム」を知り尽くした座付演出家が、(台本の内容よりも)ファンコミュニティが満足する「タカラヅカらしい」「あてがき」作品に創りあげます。
それを一つの組でなく、複数の組で上演するとどうなるのか・・・組が変わる=トップスターが変わる、すると同じ作品が全く違う作品になります。組に関係なく全ての公演を観るというありがたいファンも確かにいらっしゃいますが、おおかたのファンは組(トップスター)についていますから、組が変われば劇場に足を運ぶファンもガラッと変わります。

おまけに、厳格なスターシステムに則って作品が作られるために、トップ、2番手、3番手・・・というふうに、作品だけでなく生徒(役者)を比較する楽しみが生まれます。それぞれのスターのファンは他の組(の同じ役を演じるスター)に負けないように競ってチケットを買いますし、セットや衣装、照明や音響プランも使いまわしが効く・・・
よって、複数の組で一つの作品を上演すればロングラン公演に近い効果が得られるのです。

次に「2」についてご説明します

基幹公演である「宝塚大劇場」→「東京宝塚劇場」の公演に引き続いて、「全国ツアー」「博多座」といった外部へ売却する公演を実施します。
これらでは通常、新作公演することは無く、直前の「宝塚大劇場」→「東京宝塚劇場」と同一演目が続演されます。つまり、同一公演で回数を稼ぐことと同じ意味合いを持っていますので、追加コストはほとんど発生しません。阪急の自主興行ではなく、定額で外部売却となるために利益率は若干落ち込みますが、ロングラン興行に近い形態で利益を獲得することが可能となります。

自主制作能力が十分でない全国各地のプロモーターにとって宝塚歌劇公演は、「宝塚大劇場」→「東京宝塚劇場」と同一演目であっても確実にチケットを売りさばくことができるため、のどから手が出るほど確保したい公演です。
また、この地方公演には常に「裏番組」が存在・・・つまり組を2分割しているため、ファンコミュニティがこぞって地方公演に押し掛ける仕掛けを施しています。詳しくは拙著「元宝塚総支配人が語る『タカラヅカ』の経営戦略」を参照ください。)

このように、ロングラン公演が不可能という、エンターテイメント事業では致命的な弱点を、「シロウトの神格化」(ファンコミュニティの活性化)というタカラヅカビジネスの「肝」を上手く活用することで「災い転じて福」となしているのです。

商品、サービスに自信があるのに、なぜか売れない。
ファンコミュニティ創成、維持、拡大によって顧客との中長期的な関係性を強化したい。
とお考えの皆様・・・タカラヅカ・ビジネスの方法論でその課題、お悩みを解決します。
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