090-8124-3470
サイト内検索
- 文字サイズ +
Column
印刷範囲
全体プリント
本文プリント

タカラヅカのビジネスシステム~その1~

投稿日:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

みなさま、新年あけましておめでとうございます。
本年も北摂演出研究所代表、森下信雄のコラムをお引き立てのほど、よろしくお願い申し上げます。

今回からは、タカラヅカのビジネスシステムについて、考察を試みようと思います。
1回目は「自主制作、自主(主催)興行とコミュニティ形成の関係性」についてお話ししましょう。

エンターテイメント事業にとっての「自主(主催)興行」の重要性

イベントやコンサート、演劇といった興行の宣伝に、「主催 ◯◯◯◯」と、真っ先に表記されているのをご覧になったことがあると思います。ここでいう「主催」の意味は「自らリスクを負って興行を実施する」ということであり、興行が成功すれば利益を手にし、逆に失敗すれば損失を被る「主体者」であることを意味しています。

いっぽう、自主(主催)興行と対極に位置づけられるものに、「貸館」があります。一般的な劇場や競技場など「箱」を貸し出すことが多く、自ら販促や宣伝を行うことはほとんどありません。興行のリスクもありませんが、その分収益も事前に取り決めた金額しか入ってきません。

そのような状況の中で、宝塚歌劇事業の収益源の一つである「全国ツアー」事業は、すでに宝塚大劇場及び東京宝塚劇場にて上演した演目をダウンサイジングして、全国各地の公共ホールや会館に「購入」をして頂くため、売主である阪急電鉄にとっては追加投資がほぼ無い、非常に利益率の高いビジネスになっています。それと同時に、自主制作能力のない地方の会館にとって宝塚歌劇は放っておいても自主(主催)興行として売上の上がる貴重なコンテンツというわけです。

宝塚歌劇興行はほぼ全て阪急の「自主制作」「自主(主催)興行」

宝塚歌劇の興行で特徴的なのは、何と言っても1年の間に舞台化されるほぼ全ての作品が阪急電鉄の「自主制作」「自主(主催)興行」です。すなわち鉄道会社が演劇興行のリスクを負っているという珍しい事業形態です。

宝塚歌劇興行の大黒柱は無論本拠地の宝塚大劇場ならびに東京宝塚劇場における年間合計約930回に及ぶ公演ですが、これは全て阪急の自主(主催)興行となります。その他「宝塚バウホール公演」や「東京特別公演」といった興行も阪急主催で実施されています。

宝塚歌劇の興行で、阪急が外部に売っているのは先述の「全国ツアー(一部は阪急主催)」「中日劇場公演」「博多座公演」などごく一部にとどまります。また、本拠地の宝塚大劇場が「貸館」されることはありません。

宝塚歌劇ビジネスの強みの根源はこの「自主制作」「自主(主催)興行」ですが、それは収益、利益といった定量的要素だけでなく、良質な「ファンコミュニティ」の創成、維持、拡大といった定性的要素にもつながっていくのです。双方の相乗効果によってビジネスがさらに盤石なものになっているのが、タカラヅカビジネスの大きな特徴なのです。

ファンコミュニティの共感、感情移入を「演出」する「シロウトの神格化

作品を自主制作して自主(主催)興行する・・・それを可能にしているのが「創って作って売る」垂直統合システムの存在です。

小林一三翁によって導入されたこのシステムについては、拙著「元宝塚総支配人が語る『タカラヅカ』の経営戦略」に詳しく記しているので、そちらを参照いただきたいと思いますが、ひとことで言うと、歌劇作品の企画(川上)からキャスティング、道具や衣装の製作、そして販促、劇場経営、グッズ販売(川下)に至るまで、全ての機能を一気通貫で興行主催の阪急グループが握っているシステムと理解いただきたいと思います。この「閉じた」ビジネスシステムの存在が、タカラヅカの代名詞である熱狂的なファンコミュニティを創り上げる原動力になっています。

宝塚歌劇団に所属する役者(生徒)は基本的に他社が制作する舞台に客演することはありません。入団から退団まで宝塚歌劇団が自主制作した舞台に立ち続け、その間に、拙著で「シロウトの神格化」と呼んだ「トップスター」を目指してステップを昇っていくのです。そのプロセスを、まるでわが子の成長を見守るように「共感」「感情移入」しながら寄り添うファンコミュニティとの「価値共創」が、タカラヅカビジネスの根幹を形成するのです。

つまり、ファンコミュニティは、応援しているスターの歌唱力や演技力といった「技能」の上達よりもむしろ、タカラヅカ独特の美意識、世界観である「男役」としての成熟を求めているのです。作品制作を始めとするさまざまな商品コンセプトに求められるのは、一般的な「作品力」「商品力」ではなく、スターを「立たせる」(男役としての魅力を最大限発揮させる)ことの方なのです。私の宝塚総支配人経験からも「完璧な台本」よりも「カッコいい男役」が描ける、演出できる演出家が評価され、そのような作品がヒットするのがタカラヅカなのです。

自主制作、自主(主催)興行とコミュニティ形成の関係性

宝塚歌劇独特の美意識、世界観をまとい、最終到達目標である「トップスター」に神格化していくステップに寄り添う、強固なファンコミュニティの特異なニーズを満足させる、必要かつ十分な条件が、上記の「閉じた」垂直統合システムによって「自主制作」される「自主(主催)興行」となるわけです。

トップスターの地位を狙い、競うスターたちが位置している「神格化プロセス」それぞれのステップに見合った台本、台詞、歌、ダンスを「当て書き」する=スターを「立たせる」ことが宝塚歌劇演出家の絶対条件となります。いくら素晴らしい台本であっても、スターが輝かない(立っていない)作品はタカラヅカのファンコミュニティには評価されません。従って、名だたる外部の演出家が宝塚歌劇作品制作に参画したがらない理由の一つがここにあります。

タカラヅカが100年継続した最大の理由は、強固なビジネスシステムの存在と、ファンコミュニティの嗜好の相乗効果が独特の美意識、世界観=「ブルーオーシャン」を形成しているところにあるのです。

商品、サービスに自信があるのに、なぜか売れない。
ファンコミュニティ創成、維持、拡大によって顧客との中長期的な関係性を強化したい。
とお考えの皆様・・・タカラヅカ・ビジネスの方法論でその課題、お悩みを解決します。
お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。

電話090-8124-3470

お問い合わせフォーム
ページの先頭へ